川を安全に楽しむために(ダイジェスト版 20021030up)
「川を安全に楽しむために」には、だれもが、楽しく、安全に、「川」、そして水辺空間・・・湖や池、穏やかな海を楽しむための共通点も盛り込んでいます。水辺を友として付き合っていくため、川で遊ぶ際の「危険を回避し、いざという時の対応法」 について理解を深める一助となることを願って作成しました。

(会の性格から、専門的な救助法、医学専門データ、考察等についてはその権威に譲ります。内容にご意見や誤りがあればどうぞ教えてください。)
目 次

川の中の危険

川遊びのための服装と安全装備

実践安全講習

資料:
1.生命機能の確保と確認 ABC-BC
2.呼吸停止後の蘇生術開始と生存率
3.体温調節   熱疲労・日射病・低体温症

 川の中の危険

 流れのない池や湖、貯水槽、プールなどでも人は溺れることがありますが、川には独特の水の流れや障害物があり、安全に川で遊ぶためにはその特徴を知ることが大切です。
 川の水は、高いところから低いところに向かって、様々な変化を繰り返しながら流れることが、大きな特徴です。
 それはあるところでは緩やか(瀞場、フラット・ウオーター)に、また他の場所では早い流れ、急流(瀬、ホワイト・ウオーター、ラピッド・ウオーター)となり、それらが直進したり、または蛇行したりして、川幅は太くなりまたは狭くなります。また川底の形や地形、地質、勾配、水量の変化により、その場所ごとに複雑な流れを作りながら河口まで、連続的に変化しながら全体の川の様相を作り出しているのです。
 ここでは特に川の流れ中の特徴と、それに伴って発生する危険について述べることとします。


川流水 川の中の複雑な流れ


・ 流水  川の水の複雑な流れ
本流部(流芯)は主に川の中心にありますが、時には左右の岸近くの深い部分を強く流れている事もあります。
その他両岸の浅瀬や、岩の後ろにできる、上流へ向かう逆側流(エディ)があり、うまく利用すれば、川の流れから人や舟が出るときに利用することもできます。
底から沸き上がるようなボイル・ウオーター、地形や障害物が作る返し波、川と川との合流や、伏流水など、複雑な要素によるそれぞれの川の流れには特徴があり、場所により、水量により、地形の変化により、常に一定ではないという認識を持つことが大切です。

・ 川底  何があるかわからない 
川の底はプールの様に一定ではなく、浅い/深い、堅い/柔らかい、が一様でなく混在しそれ以外にも見えない危険物が無数にあります。
たとえ浅い所でも、「背がたてるから、平らな川底だから」という安心感が裏切られ、恐怖感に変わった時に、あわてて水を飲み溺れるという、落とし穴にはまることがあります。
またほんの小さいくぼみや針金、岩の隙間などに足を取られ、捕まると、強い流水が体を川底に張り付け、浅いところでも溺れます。
川の中は危険なモノでいっぱい!
ビン、缶やロープ、釣り糸など
岩に付いたコケ、滑る!→ ←水中植物は足に絡まる

・ 岩
川の中や左右両岸に突き出る岩に、舟や漂流者がぶつかったり、こすられると、大きなダメージを受けることがあります。カヌーを楽しむ人々が常にヘルメットをかぶっていること、そして、ウェットスーツや長袖・長ズボンで「沈」に備えている人が多いのはそのためです。 (註)
註:沈没の「沈」、舟、カヌーなどが転覆すること

障害物
・コンクリート・ブロック(通称テトラポッド等)、橋脚
護岸のため、流れの強くあたる場所に設置されることが多く、中にはコンクリートが壊れてむき出しの鉄筋や、窪んだ部分などに引っかかると、舟にも人にも大変に危険なものです。
特に岸の一部の護岸用よりも段差のある堰に川幅いっぱいにおかれている場合は、人も舟も近寄る場所ではありません。それを造った人たちは「人が川で遊ぶ」という発想を全く持っていなかったと思います。 

・ 流木・倒木
障害物にひっかかった流木は、形にもよりますが、時には鋭くとがった枝や二股がフォークのように人や舟を差し挟み、強い流れの場合は舟や人を水中に引き込み川底に張り付けます。 避けることが第一ですが避けられないときは、あわてずその上側を乗り越えるか、あるいは側面を押さえつけて回り込むように避ける必要があります。川では、決して障害物の下をくぐることのないようにするのがポイントです。

・ 杭(くい)
落ち鮎漁や流しカゴを使う漁師が、浅い川底に打ち込んだ杭には金属を使ったものもあり、人間やゴムボート、布製のファルトボートなどには特に危険です。
漁師の中には杭の存在を示すために白いリボンを付け、人や船が通過する場所を示している場合もありますので、川面を注意深く見ると共に、季節の、あるいは地元の川情報の入手も大切です

・ 障害物への張付き(ラッピング)
橋脚や水上に突き出た岩などの障害物に上流からの水圧で、舟が張り付いてしまう状態で抜け出せなくなると、非常に危険で、舟はおにぎり(岩)に巻かれた海苔の状態になります。
舟の上部(開口部)が上流側に傾いた場合に、あっという間に水が入りこんできて、水圧により張付いてしまいます。乗込口の狭いカヤックなどは、足の骨折や命の危険もあります。
避けられない場合はあわてず、張り付く直前にパドルや手足ででクッションを作り、押し戻すように回避します。

落差、段差のある場所
堰は水位を調整し、ダムは水量を調整するものですが、最近では可動堰という両方の役目を持ったものを良く聞きます。大きさについては小さいものから巨大なものまで様々です。

・堰(せき)
流れのある川に自然の落差による落ち込みや人工物の堰堤、大きいものは当然ですが、低い小さな堰もまた危険な場合があります。
堰の上流には流れ着いた障害物があり、堰の下流側には逆流する渦が発生し、人や舟が安易に入ると捉えられて 脱出することが困難になります。
さらに大きな堰では脱出が困難な再循環流(リサーキュレーション)により、つかまった人は巨大な洗濯機を横にした状態で浮き沈みをくり返し、よほどの智力と鍛錬がない限り抜け出すことができません。特に左右対称で上下が均一に造られた人工コンクリート構造物は、自然のそれと異なり渦や流れが整然として、抜け出すきっかけを掴みにくくなっています。
再循環する流れ「リサーキュレーション」
・低いダム(ローヘッドダム)
堰堤前後の水中には流れ着いた危険な障害物があり、堰の下流側にはハイドローリックと呼ばれる逆流する渦が発生し、ここに入り込むと人やボートは捉えられ脱出することが困難になります。

・中程度のダム(ダム)
ローヘッドダムと同様の危険がありますが、さらに脱出が困難な再循環流(リサーキュレーション)が発生し、ここに掴まった人は巨大な洗濯機を横にした状態で浮き沈みの渦によりよほどの訓練と体力がない限り抜け出すことができません。特に左右対称で上下が均一に造られた人工コンクリート構造物は自然のそれと異なり、渦や流れが整然としているため、はじき出されたり、抜け出すきっかけをつかむことができにくくなっています。堰の下にテトラポットやコンクリートブロックが敷き詰められ、その残骸の鉄筋などがでているところもあり漂流者やボートにとっては、まさに地獄絵図そのものです。
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 川遊びのための服装と安全装備

 ここでは川の中に入って遊ぶ時の、服装について述べますが、河原遊びや釣りなどでも、暑さや川への興味から水に入ることがあり、溺れた人を助けることになるかも知れません、川へ近づく全ての人にも参考になれば幸いです。

服装
着るもの 暑いけど長袖、長ズボン!
川は水面の反射や、遮蔽物が少ないために陽射しが強く、一方では水中の危険物(別項)で足や体を傷つけることもあります。そこでなるべく肌を出さないような服を選びます。
ウェットスーツ、ドライスーツ、パドリングジャケットなど専門のモノが望ましいのですが、それ以外の場合の基本的な点を考えてみましょう。

(素材)
撥水性・低吸水性・吸湿速乾性の素材
なるべく水をはじき、乾きやすい合成繊維(ポリプロピレン、、ダクロンなど*一部商標名)が望ましく、綿製品は水を含み体温を下げ、体力を消耗するので不向きです。
(これだけは絶対いけません!) 
硬いスリムなジーンズも水を吸い重くなり、川遊び、着衣での水泳には不向きです。
(おすすめ準備)
下着 木綿製は避ける(水着など、速乾性の素材がよい)
衣類 ある人は、ウエットスーツ、ドライスーツ (サーフィン用でもOK)
    防水パドリングジャケット等
    無い場合は、木綿製ではなく、撥水性・低吸水性・吸湿速乾性の素材衣料
    化繊系(合成繊維)素材の、トレーニングウェア上下
    薄手フリース製の衣類など(長袖、長ズボンが原則です)
その他の用意したいもの
    ・風・防寒のためにウィンドブレーカーや雨具の用意
    ・厚手ビニール袋
     濡れたものを持ち帰る、又舟に乗っている間、私物が濡れないようにする
    ・眼鏡使用の方は、あれば眼鏡バンド
     (無い方、コンタクトの方は落とさないよう、ご注意!)

はきもの  ダイビング用、マリン用、 アクアシューズ、ブーツなど
ゴム系素材で保温性が良く、ケガから足を守り、岩や粘質の泥に足を取られにくいものが、お勧めですが、そうでなければヒモがない、軽い運動靴で良しとしましょう。
反対に危険なのは長靴(水が入ったり、逆さまに浮袋となる)、底が厚いもの、重くごつい靴、ひも靴等、ビーチサンダル、などです。裸足はもってのほかです。

帽子
 風通しのよいもの
陽射し対策で、風通しの良く、つばの広いもの。風に備えてクリップひもがあると飛ばされません。
またカヌー乗りが岩や、沈に備え、ヘルメットをかぶることは前述の通りです。自転車用のような空気や水が抜けるものを選びます。

安全装備 
安全装備の充実は服や靴とともに、確実に命や体を守り、危険回避と対応の可能性を大きく高めます。これを学ぶことで川でのイベントやツアーに参加する場合も、主催者やリーダーの安全配慮を示すバロメーターにもなります。
その目的と正しい使い方を学ぶ機会があれば身につけ、経験を重ねるようにしたいものです。

・ ライフベスト(ライフジャケット、PFD=Personal Floating Device) 
川で遊ぶ人が真っ先に買うものがこれだと思います。これを着ていれば水の中でも浮いていることができるので、あわてず、落ち着いて行動することができます。
また体温低下防止や、目立つ色・反射板により緊急時の早期発見にも役立ちます。
最悪の場合でも救助者、捜索隊の負担を軽減します。
サイズと目的にあったものを選ぶのがポイントで、できれば団体や他人まかせでなく、自分と家族のモノは自主的に 用意することが精神的な面、セルレスキューという自立した意識も含め大切だと思います。

・ スローロープ(レスキューロープ・投込み用の縄)  
川に落ちた人、流されている人に対してロープ付きの浮力体を投げ渡し、川の流れを利用して岸につけるための道具です。
また助けに行く人自身の身体確保、沈をした舟などの確保、橋から橋脚下部へ降りるときなど、使い方はさまざまで長さは5m〜25mと色々のサイズあり、カラピナで連結すると50m・100mと延長ができます。
軽いアルミ製のカラピナ(取り外し可能な金属リング)をセットし、いつでも使えるように体、舟などに取り付けます。 特に集団での舟遊び、激流下りのラフティング、陸上でのレスキュー員などの川遊びのリーダーなどには必需品です。
最近は緊急時、装備の無い場合にペットボトルの首に細いロープを縛り付け、代用品とすることが提唱されています。(後述)

・ 携帯電話  防水処置を忘れずに 
説明の必要がない便利グッズ、消防(119)、警察(110)、海上保安部(118)、その他
川遊びのグループ内での連絡に欠かせませんが、必ず防水処置を施すことがポイントです。
市販品で¥200〜¥3600位の専用防水袋があり、袋に入れたまま使用可能。
常に自分の位置や状況を言葉で説明できるようにしておくこと。(車は入れるのか、今入るのは、右岸か左岸か等)

・ その他(参考)
・救命浮具(浮き輪、投げ込み用浮力体など)
・発煙筒(救助者、救急隊などへの目印、合図用、自動車にあるものは防水ケース入りで使えます。
・発光器(夜間や暗いところで、救助を求め、所在場所を示すもの、懐中電灯、防水発光器、ファイアスティック)
・笛(助けを求め、他人に合図する)
・ドライバッグ(大小あり着替品の乾燥保持、防水性のない安全用品を収納し、浮力体にもなる)
・眼鏡止め・帽子止め(川や海の紛失品の定番、気を取られる危険のきっかけを防止する)
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 実践安全講習

被救助者 (もし、自分がおぼれたら)
1.あわてない・・・・・・冷静さを失わず、恐怖感にうちかち、助けられ、自ら助かるチャンスを待つ

2.救助を求める・・・・・・合図「助けて!/HELP!」・「手を頭の上で左右に振る」

3.水中での状況判断と行動・・・・・・泳がない・泳ぐなどを選択する。
「場合によっては安全に流される」(泳がない)
強い流れのある場所では無理に泳がず、なるべく安全と思われる方向に流されて体力を温存し、流れのない緩い所に来るなどのチャンスを待ち一気に泳ぎ岸にあがる。
「安全な漂流方法」*着衣漂流
泳ぎに適さない服装の場合も同様に あおむけで顔を下流方向に向け、手を左右にのばしバランスをとる。川底に挟まれないように、足を下流に向け浮かせて岩などの障害物に備える。岸にたどりつける機会に備える。状況判断の上、機会を捉えて一気に泳ぐ。
下流の状況がひどくなることが明らかで、さらに危険が想定される場合は、逆にためらわず、一気に岸に向け泳ぐ。

救助実行者(もし、人が溺れていたら)
1.あわてない・無理をしない(二次災害の防止)

2.被救助者に大声で助ける意志を知らせ、励ます・・・・・・眼を離さず、確認し合図(アイコンタクト)=助けるぞ!わかっているぞ!投げるぞ!)

3.人を呼ぶ(大人/消防/警察などへ通報) ・・・・・・ 近くの人に知らせ、援助を求め、役割分担をする(チームづくり)
  例・指揮、救助、救助者補助、連絡、岸への引上・搬送、現場救出路の確保、救急車/ヘリ等の誘導、緊急通報、プロの援助と救急体制の確保(消防/警察) 

4.浮力体を投げる 浮く物、スローロープ(安全装備の項参照)・・・・・・
浮くモノを投げ、浮力を確保させる

手近にあるものの活用:、クーラーボックス・ロールマット・ポリタンク・太薪・ランドセル・空箱などを、ひも・ガムテープで束ねる(これを、まとめてゴミ袋に入れると防水性が向上)。ゴミ袋に空気/風を入れて縛り、浮袋を作る等 

5.岸に近づけ、岸に上げられるモノを投げる
ロープ、ポール、釣り竿、竹竿(針と糸に注意)、梯子、木、枝など
手近にあるもので効果的なもの:(ロープ + 浮力体) ペットボトルの首、水筒のヒモなどにロープをくくりつけ投げる。(ペットボトルの中の水をわずかに残し、投げるさいに風に飛ばされないようにすることがポイントです。ロープがなくとも浮力体としての役目も大きい)

 ●川を渡る、歩いて救助に向かう場合
 ・舟のパドル、オールや棒、ポールなどで水深や、穴、深み、障害物、岩などの危険を確認しながら進む
 ・強い流れの場合は、二、三人で手や服、ライフベストなどをつかみ合い、対面、円陣スクラムを組みながら進む

6.川から引き上げる
被救助者が、投げたモノをつかんだのを確認し、川の流れを利用して、岸へ寄せる。(いきなり自分の方向に引かない)。 
岸から手を伸ばす場合は、岸に腹這いになる、手すり、立木などに一方の手で体を確保するか、他の人に足や腰などを確保してもらい、引き上げる。
助けたら必ず、救急隊、病院に引き渡すこと!これを怠ると肺の中の水により陸上で溺れ死ぬことがある

7.救命/心肺蘇生(法)
(a) 呼吸があるか?(耳で聞く)
  息がなければ・・・・気道を確保(アゴを鼻の方向に持ち上げる)?鼻をつまみ?口から息を吹き込む
(b) 心臓は動いているか?(脈をみる)        
  止まっていれば・・・・硬いところに寝かせ、心臓マッサージ
* 呼吸停止から、数分で心臓も停止するが(別表参照)、外気温・体温・人体メカニズム・脳への酸素供給など、未解明な点が多く、特に低温下では人体(内蔵・脳等)が長時間守られる場合もあるので簡単に諦めないこと!

8.予防 (危険に陥る前に)
危険に陥らないためには充分な睡眠と食事、日中は水分を充分摂る(1.4 リットル/毎8時間 ?350 CC/2 時間)などにより、体調の管理に気を配ることも大切。いざというときあわてず行動できる基礎。
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 資料


1.呼吸停止後の人工呼吸開始の生存率
1.呼吸停止後の人工呼吸開始の生存率 3分 4分 5分 10分
生存率(一律ではない) 75% 50% 25% 〜0%


2.緊急時の原則 (ABC-BS)
Airway Breathing Circulation Bleeding Shock
気道 呼吸 循環 出血 ショック
確保 確認 鼓動確認 確認・止血 観察・安心・激励


3.体温調節の失敗からくる症状
熱中症/日射病/熱射病

赤い顔・フラフラ・発汗なし
応急処置 ・防止処置 体を冷やす・水分をまめに飲む・直射日光を避け帽子・長袖長ズボン着用・木陰利用
熱疲労

顔が青ざめ体温低下(日射病の逆)
応急処置 ・防止処置 服を着せて、温かい場所で、保温し安静にして睡眠・休息させる・UV保護剤の塗布
低体温症

体温低下で腕/脚への血流が停止、数分後に泳げなくなる(臓器内への暖血保持機能)
応急処置 ・防止処置 長時間水中にいない・又はウエット/ドライスーツ等の着用・着替品の乾燥保持



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