楽しいぞ!航海中の料理と買出しのヒント 〜 南仏運河クルーズ編

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 幸運なことに昨年に続き、ヨーロッパ運河ツアーに参加することができた。学生の頃、惹かれてやまなかったゴッホを、狂気へと導いた日ざし。あのセザンヌの光と影、きらめきの南仏へ。

 今回のクルージング・コースは、運河が都市部沿いである上、名跡・名所を訪れる為に昼間下船する機会も多いので買い出しの心配は少ない。又、ツアー前半がクルージングなので、メンバーはまだ元気一杯のはず、とメニューづくりにそれほど悩まないですんだ。その上、ある程度現地の事情が飲み込めていたことが心強かったといえる。
 昨年のミディ運河を思い出すと、あれこれと気をもんでいた自分がおかしい。

 少しでも心の余裕があれば、リラックスして楽しく過ごせることがわかったので、旅するコースによって事情が異なるとは思うが、2回目の報告は、ごく具体的な情報を書きとめることにした。取り越し苦労よ、さようなら。 これから運河クルージングを体験しようという人たちに、Bon Voyage!

 
(かとうまきこ2000年10月)

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■このレポートに関する覚書
  ・旅行日程:2000年5月19日〜28日     
 クルージングは5月20日〜5月24日(うち船中3泊)を3艇で航行
・用意した食事;朝食3、昼食2、夕食1
・クルージングした流域:ポートカッサフィーレ〜アグド〜フロンティニアン〜パラバス  〜アルル〜プチローヌ〜サンジル〜ニーム〜ポンテュガール〜ポケール(アンダーライ  ンが停泊地 )
・参加人数と構成:参加者:21名 ツアーコンダクター:1名 通訳:1名 計23名
・使用した船会社:昨年同様Crown Blue Line
・厨房船の船種:クルセーダー

 

■日本から食料を持ち込む場合の通関手続き
  <日本>  食料は団体ツアーで行く場合は、ひとつのトランクに食料をまとめて入れて一度航空会社に預けてしまえば、どんな食材(米含む)、フライパン等金属類もトラブルにならなかった。  ただし、気圧の関係か、一度口を開けた液体類はどんなに蓋を締め上げてあっても、とれてしまうことがある、ことは経験してしまった。ご注意を。

<フランス>  上記のトランク内容が通 関で問題になったことはなかった。ニュージーランド植物検疫のような厳しさはない。出国時も同様だった。

 

■乗船の前に
 

<食料などの調達>  
  基本的消耗品の食料や調味料、紙・ビニール製品(トイレットペーパーやゴミ袋等)はすべて持ち込みだから、買い出しが必要。船会社に注文して買い物を代行してもらうこともできるが、フランス市民の日常生活をかいま見るチャンス。乗船前にスーパーなどを見つけ、フレッシュな現物を前にしてメニューのイメージを膨らませ、あれこれとみんなで買い出しをすることが旅の素敵なイントロになる。
 最近ではパリでもそうらしいが、「あんたここはフランスよ。フランス語でしゃべりなさいよ」といった取りつくしまのない甞ての対応は嘘のよう。とても人当たりがよくなった。英語もずいぶん通 じるようになっている。但し、クレームを含めた交渉事は毅然として当たらないと太刀打ちできない。

<現地での買い出し事情>
 南フランスの食料購買力はなんてパワフルなんだ。と驚嘆するくらい大型スーパーからよろず屋、街道の露店までにぎわっているし、売れているし、回転がいい。行く先に港町と下船する余裕さえあれば、品揃えは別 としてショッピング可能といえる。ただし、日曜・祭日・当地独自の祭日は頭に入れておかないと。朝9時から12時30分、午後3時から7時までの営業が一般 的。
 現地の野菜はかたちは悪くても味が濃くて美味しいし、肉類も力があって旨い。しかも安い。ワインの味と安さはいわずもがな。雑貨類も豊富だ。醤油や味噌、日本茶、箸などは現地調達できないと考えた方が無難。

 スケジュールが許し、港で下船できるチャンスがあるなら、こまめに買い出しをすることをお勧めしたい。パンなどは焼たてが身上だから、散歩がてら毎日買いに行きたいくらい。途中でワイナリーを見つけたら、他の乗船メンバーが反対しても自転車を飛ばして行く価値がある。と思います。

<クルージング会社に食料を直接注文する方法>
 買い物事情が解らなかったり、到着してすぐ乗船するようなスケジュールの場合便利なシステム。船会社が発行している「船長マニュアル」の最後に添付されている、食料リストに記入してファックスで申し込んでおけば、船の借り出しの際に、きちんと箱詰めしたものを渡してくれる。支払いは現地でOK。市価に近い値段で質もまずまず。

<行程に合わせた食料の準備計画>
 まず、準備する食料の内容は、どんな旅をしたいかによって決まると思う。個人ツアーは別 として、いろんな人が初めて会って、さあご一緒にというケースでは少し内容やメニューを工夫した方がよさそうだ。疲れもでるし、いやでも狭い船内で一日中顔を合わせていることになるのだ。ちょっとした酒の肴や、甘い物、ほっとする日本食が、いい潤滑油になってくれる。自分の嗜好や体調を考えて、個人装備として日本から食料等を持参するのもいいし、おすそ分けすれば、大好評だ。今回賄い方としては、和風調味料、米、レトルトうどん、インスタントラーメン、漬物、珍味、梅干し、海苔、羊羹等を準備した。

 ただ、肝心の食料準備計画となると、これは行程との相談。  コンボイを組んでひた走らねばならない、といった行程が予想される時は、各船に簡単につくれて食べられる食料や非常食を配分しておかなければならない。そして潤滑油としての嗜好品もあればうれしい。今回は一日行程12時間が予想される日があり、出発時各船にインスタントラーメンやサンドイッチ・セットを配分し、各船で調理した。

<今回の買い出し記録>
・買い出し地点(計3回)
  乗船前5/20にモンペリエ(超大型スーパー)
  5/21にグランモット、タラスコン(町のよろず屋)
・会計  買い出し2回 酒類、食料品、雑貨等を含め合計約2800フラン(1フラン=約20円)
・購入品一覧
雑貨類(各艇に配分)  
ゴミ袋・トイレットペーパー(匂いのないものを選んで食器を洗う前にこれで拭き取った)・紙コップ・紙皿 食品類  
まかない用:現地でざっと組み立てたメニューにそって人数分のパン類・肉・野菜類・半調理食品・乳製品・調味料・水等
各船に配分:加工食肉類・乳製品・スナック類・おやつ・缶詰め・水・ジュース・ 牛乳・ワイン・コーヒー・紅茶・果物等
 
  

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▲料理の合間に、運河をスケッチ

■乗船したら・・・
  <船内の居住性と備品について>  
今回厨房船となった船種はクルセーダー。船には様々なタイプがあり、船内のレイアウトや使い勝手、定員数も異なるが、キッチンは快適だし、食事をとるスペースも結構ゆったりしている。  キッチンまわりに関しては後述する私的事項*以外は日常生活に支障ないと思う。乗船人数分の食器類はそろっているし、対応できるだけの鍋もある。  タオル・バスタオル・シーツは乗船人数分一組、テーブルクロス等のリネン類も換えを含め用意されているが、時間的余裕があれば最低必要品と思うものは乗船したらチェックした方が無難。毛布が足らなくて旅の終わりまで、寒い夜を過ごすはめになったりする。

 

■船上での調理に関すること
  <舟の厨房設備について>

 4口のコンロ、大きめのシンク、蛇口をひねれば出る水、七面鳥が丸ごと入るオーブン、小さめのグリル、調理台等が狭いスペースに使い勝手よく収まっている。電子レンジは見かけなかった。

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▲快適な船の厨房

●写真左(キッチン)
 下の開き戸には食器や鍋類。引き出しには調理用小物類が入っているが、これはどう見ても船会社が揃えたものばかりではない。今迄乗った人が残していったものが溜まっていて種々雑多でおもしろい。私も去年、今年と忘れてきたものがある。誰かが使ってくれているといいのだけど。鍋類はごく一般 的なものが大中小揃っている。  *問題は、包丁とフライパンだ。これは困る。切れない、焦げるでテンポ良く料理するにはイライラのもと。で、去年に引き続き自前の包丁は隠し持ち、テフロンのフライパンを持参したが、大型マーケットでショッピングする余裕のあった今回は、どちらも現地で買って、おみやげに持って帰れば良かったと後悔している。

<水> 
 調理と洗浄、飲料水  調理は蛇口から出る水を使う。但し飲料にするには10分位 煮沸してから。(と、現地ガイドさんは言っていた)パスタ等の茹で水には使用できる。だから、飲料水と調理用の水はエビアンやビッテルのノンガスを1リットルボトルで購入する(一瓶7フラン位 )、調理・飲用を含め一日一人1,5〜2本位見当に準備した。
 水はキッチンでもトイレでもシャワーでも使用する。これは水タンクが出港時満タンだとして、全員が普通 に使って2〜3日分位かと思われる。

<火・電気>
 火口はプロパンガスを使用している。船やコンロによって異なるのか、火力に差がある。工夫し、我慢するしかない。  電気は船のエンジンと連動している。エンジン音が近隣の船の迷惑にならないよう、夜更けから朝の適当な時間まで使用できない。  したがって、冷蔵庫は夜間、電源が切れてしまうことになる。昼の間にジュースや行程の後に使う肉などを凍らせておき、それで保冷するなどの工夫が必要だ。能力からいって氷のどっさり入った水割りなんかは、望めない。

<船上でのクッキング・ルール>
 航行のルールとしてロック通過時は火を止めることになっている。船上の景色は移り変わって目が離せないし、ロック通 過準備等やることも多い。疲れも出る。鍋を火にかけたまま忘れたりしないよう、とにかく火の用心。

<船上での料理方法の工夫>
・船上ではアウトドア料理の知恵が生きるので、そういった関連書籍を読んでおくと参考になる
・オーブンを活用する(火力が弱いときや、いっぺんに数種の料理をこなさなければならないとき)→炒め物を半調理状態でオーブンに突っ込み、その間他のものを調理、最後にオーブンから取り出した炒め物を味付けして仕上げる。
・余熱を利用する→夜の内にご飯を炊いて、たきあがったら水を足してかき混ぜておく。翌朝焦げないように温めておかゆの朝食。         
→ロックに入る前にお湯を沸かしておいて、火を止めたら卵を投入。お湯が冷めれば温泉卵のできあがり。など、工夫次第。

ゴミの処理>
 ゴミは瓶・缶とその他に分別するだけ。ビニール袋に入れて立ち寄った各ポートのごみ箱に捨てる。

<残ってしまった食料は・・・>
 途中で余りそうなのが解ったら、開封していないものに限って隣の船やロックキーパーに「もう旅が終わるので、良かったら食べてください」ともらってもらう。これは運河の河筋では習慣化しているようで、気持ちよく受け取ってくれる。  最後の最後は船を返したとき、船会社のスタッフに進呈。買いすぎるのがいけないとは、重々承知しているのだが・・・。

<舟の返却に際して>
 クルーズが終了するときは、ゴミを出し、厨房の備品をすべて洗って元に戻し、キャビンを清掃。借りた状態にして返却、下船する。「また、来るよ」の思いを船上に残して・・・。

 

■クルージング中の食事メニュー
5/21(日)
朝食:ホテル 昼食:野外にブルーシートをひいて
 チコリ味噌添え   
 タラコディップとスコーン
 サーディンマリネ  
 キュウリ塩もみ・トマト
 うどん(揚げ玉・ネギ)
 チーズ、果物
DINNER    
 フォアグラとコルシニョン    
 サラダ    
 ラタテュイユ   
 スモークサーモンと玉葱ケッパー    
 ちらし寿司    
 鶏とキノコのバルサミコ風味マッシュポテト添え
 豚肩ロースとキャベツ・ニンニクポットロースト
 チーズ盛合わせ、果物
5/22(月)
朝食:各船で調理    
 パン、チーズ盛り合わせ、   
 ハム、ウィンナ、オムレツ   
 キュウリモミ、
 ジャム・バターヨーグルト    
 さくらんぼ
昼食:各船で調理    
 インスタントラーメン、みそ汁    
 煮タマゴ、ハム、
隠元ごまあえ・醤油マヨネーズ   
  茹で空豆
夕食:レストラン写真
5/23(火)
朝食:みんなで船上ブレクファスト   
 おかゆ    
 中華風タマゴ、木耳のトマト炒め    
 ウィンナとザワークラウト   
 鶏・赤ピーマン・茄子・エンダイブ炒め    
 ズッキーニ梅あえ、ピーマンお浸し     
 おしんこ、梅干し、ヨーグルト    
 果物
昼食&夕食:それぞれレストラン 写真

5/24(水) 朝食:各船で調理     ありあわせで、残った食料を調理   朝食後船の返却・下船(〜11時)

 

■おまけ資料 <食事をしたお勧めレストラン一覧>

5/20(土) アグド 夕食
【L’ADAGIO RESTAURANT】 ADD:AU GRAU D’AGDE    TEL:33−04−67−21−13−00

5/22(月) アルル 夕食
【COTE COUR】 ADD:85 RUE AMEDE PICHOT 13200 ARLES   TEL:33−490−49−77−76

5/23(火) ニーム 昼食
【L’ENCLOSE DE LA FONTAINE】 ADD:QUAI DE LA FONTAINE TEL:33−04−06−21−90−30

5/23(火) サン・ジル 夕食
【MANADE DE L’AUBIER】 ADD:MAS DE  L’AUBIER 30800 ST GILLE TEL:33−04−66−87−29−25

5/24(水)アルル 昼食
【LOU MARQUES RESTAURANT】 ADD:HOTEL JULES CESARBOULEVARD DES LICES 13631 ARLES TEL:33−04−90−93−43−20

5/24(水)アルル 夕食
【CAFE DE LA NUIT】 ADD:11 PLACEハ DU FORUM 13200 ARLES TEL:33−04−90−49−44−56

5/25(木) アヴィニヨン 昼食
【CHRISTIAN ETIENNE】 ADD:10 RUE DE MONS 84000 AVIGNON TEL:33−04−90−86−16−50

5/25(木)マルセイユ 夕食
【LES ARCENAUX】 ADD:25 COURS D’ESRIENNE D’ORVES TEL:04−90−59−80−30

5/26 (金) マルセイユ 昼食
【AU SANGLIER RESTAURANT】 ADD:66 QUAI DE PORT13002 MARSEILLE TEL:33−04−91−91−28−04

5/26(金) エクス・アン・プロヴァンス 夕食
【CAF DE COUR】 ADD:45−47 COURS MIRABEAU 13001 AIX EN PROVINCE TEL:33−42−26−10−06