写真撮影・文・構成 長野正孝 
1995年3月 ■国際航路会議協会日本委員会 ■日本の水辺と運河を考える会

目次

はじめに
ハンザの町/運河の原風景/箱庭的運河都市
オランダ/環濠都市-風車、水門、跳ね橋の役割(coming soon)
フランス、イギリスの運河ー都市景観/田園風景の想像 (coming soon)

   以下続く

はじめに  

今日のドイツ、オランダ、ベルギーを中心とする北ヨーロッパでは、中世の遺構から近代的な運河、水運河川まで含め、総延長で10万キロメートルに達するであろう美しい水辺空間があります。中世の面 影を残す古い町には、中世のたたずまいを持った水辺空間があり、近世の町には近世の運河があります。木々の緑に囲まれた古い水運河川や運河の水辺空間は、魚釣り、クルージング、キャンプなどレクリエーションの場に利用され、古い閘門や橋は文化、交通 、産業遺産として美しい都市景観の形成に寄与してきました。そして、個々の小さな水辺が、やがて、多くの都市を結ぶネットワークとして、面 的な広がりをもって、潤いのある国土にしてきたのです。

 北ヨーロッパの町には、それぞれに個性と自己主張がありますが、重要なことは「水を可能な限り町に引き寄せ、逆に高速道路や鉄道を町から遠ざけている」「町の中心に人の集まる水辺と広場をつくり、そこに古い伝統、文化を伝える歴史的建造物、産業遺産を保存・再生し、町の人々の心のよりどころになる景観をつくっていく」という共通 した開発手法があるようです。  また、今日、ドイツやベルギーでは1500トンを超える大きな船が、リフト、インクライン、節水槽付き閘門という日本にはない特殊な機械装置や閘門の助けを借り、一気に30メートルから70メートルも昇降し、そして、野原や山の中を走るという日本人が今まで目にしたことがない光景が見受けられます。

 このように、今もなお近代的な運河を国民的合意のもとに強力に整備し続けている背景には、運河や水辺が美しい国土環境を創ってきたという歴史的な事実と、21世紀問題としての化石燃料の枯渇、地球の温暖化、大気汚染に対する国家戦略があるのです。  国際航路会議協会日本委員会では、21世紀の国土再生のために日本の美しい水運河川や運河の再生を願い、「日本の水辺と運河を考える会」をつくり、運河研究家である長野正孝氏にヨーロッパの運河や水辺の調査を依頼し、3年間にわたる同氏の調査成果 をもとに、ここにヨーロッパの伝統的運河がつくる水辺空間の美しさとそのロマン、現代運河技術のルーツを訪ねる写 真集を日本で初めて刊行しました。詩情豊かな写真集として、また、専門家のための新しい発想に基づく水辺景観の計画、設計のための参考、ヨーロッパ水辺散策のガイドブックとしてもお使いいただけるのではないかと思っております。

 最後に日本の運河を再生させようとする私どもの活動に対してご理解とご援助を賜ることをお願いして、挨拶にかえさせていただきます。

1995年3月

日本の水辺と運河を考える会

 

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